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エゴイスト 『綺麗な歌は歌えない 自分の為の歌だから 綺麗な歌になんかなりえない でも、だからこそ ただ心のままに歌うのだ 世界から解放される為に』 そう言ったのは誰だったか? 誰かは覚えていないけれど、その人は歌う為に生まれてきたのだと思ったのを覚えている。 綺麗な人だと思った。 傍に居る事が心地好かった。 出逢えた事を幸せだと思えた。 そして、嫉ましく思った。 でも、嫉ましく思う自分がまた心地好かった。 だから壊そうとは思わなかった。 自分が汚くある為に。 自分を確かめる為に。 自分の汚さを認める為に。 『君が君でいてくれたなら、 僕は僕でいられるだろう』 そしてそう言う僕にその人は言った。 『お前は綺麗だな』 理解できなかった。 僕にとって僕が汚いように、君にとって君が汚いなど。 『自分が綺麗だなんて虫酸が走らないか?』 もの凄く厭そうにそう言われて、想像して吐き気がした。 だから、目が合った時、二人で思いっきり笑った。 あの人は今、何処で歌ってるのだろう? |