2004/10/--
<BACK Home NEXT>

エゴイスト

『綺麗な歌は歌えない
 自分の為の歌だから
 綺麗な歌になんかなりえない
 でも、だからこそ
 ただ心のままに歌うのだ
 世界から解放される為に』

そう言ったのは誰だったか?
誰かは覚えていないけれど、その人は歌う為に生まれてきたのだと思ったのを覚えている。
綺麗な人だと思った。
傍に居る事が心地好かった。
出逢えた事を幸せだと思えた。
そして、嫉ましく思った。
でも、嫉ましく思う自分がまた心地好かった。
だから壊そうとは思わなかった。
自分が汚くある為に。
自分を確かめる為に。
自分の汚さを認める為に。

『君が君でいてくれたなら、
  僕は僕でいられるだろう』

そしてそう言う僕にその人は言った。

『お前は綺麗だな』

理解できなかった。
僕にとって僕が汚いように、君にとって君が汚いなど。

『自分が綺麗だなんて虫酸が走らないか?』

もの凄く厭そうにそう言われて、想像して吐き気がした。
だから、目が合った時、二人で思いっきり笑った。


あの人は今、何処で歌ってるのだろう?